第2章 雨止み待つ瞳
いや、実際そうなのかもしれない。
岩に入る前から目に入っていた、うっすら透ける彼女の白い肌。
つい、触れてみたいと思ってしまったのに、さっき自分は「産まれたての雛鳥」なんて、自分でも聞いて呆れるような稚拙な言葉。
如何に自分が、マヤにかき乱されているのかを嫌でも理解させられた。
それ以上言葉を紡げなくなったリーバルは、再びちらりとマヤの方を見やる。
リーバルの言葉の続きなんて何処吹く風、と言わんばかりに彼女は、雨が降る密林の方をぼーっと眺めていた。
やや半開きになった、伏せ睫毛の下にある暗い色の瞳が、一体何を捉えているのかは計り知れないが、彼はその表情につい見とれてしまった。
あぁきっと、この目に自分がはっきりと映ることなんて、何年も何百年先もきっとないんだろうな、と正直に思う。
彼もまた、あれから言葉を振り絞ることはもうしなかった。
そして、マヤに向けていた背をゆっくりと岩壁につけ、彼女が見ている先を一緒に見つめる。
早く止んでくれという気持ちと、まだ止まないでくれという相反する気持ちがごちゃまぜになり、それを溜息に乗せてリーバルは深く吐き出す。