第3章 運命の歯車
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縁壱とまゆは辰の刻から呉服屋を廻っていた。指を絡ませ手を繋いぎ、まるで恋仲の男女の様だった
まゆ「縁壱お兄様、私はもう幼児ではありません。一人で歩けます」
縁壱「まゆは方向音痴で逸れたらどうにもならん。そして変な男に絡まれる」
実を言うとまゆは、極度の方向音痴である。鎹鴉に「北北東ニ迎エー」と言われても「北北東ってどっちぃ?」と確実に言うだろう
まゆ「方向音痴は認めますが、絡まれはしないでしょー。だって格好からして、どう見ても男子ではないですか?」
縁壱「どちらにも見えるが油断するでない。例え男子に見えても男色の者が居るのだ。いい加減自分が可愛いのを自覚してくれないか?私はお前が心配でならない…」
まゆは縁壱の言葉に照れた、と同時にデジャヴを感じて切なさも感じている
まゆ「そ、そうですか…お願いします///(巌勝さんにも言われたんだよね…)」
縁壱「あぁ、離さぬぞ(愛いな…)」
傍から見ると彼氏彼女のイチャイチャにしか見えないが、本人達は至って真面目である
何だかんだとまゆの羽織の生地や刺繍も決まったのは、午の刻・昼九つを過ぎた頃だった
生地は明るい空色。生地には桃の花と、桃の花の斜め上には太陽を刺繍してもらう
まゆ「流石は縁壱お兄様!出来上がりが楽しみです♪」
縁壱「明後日、一緒に取りに来よう」
本当はもっと日数がかかる。しかし、早くまゆに自分が贈った羽織を着せたいが為に料金を倍払い、大分急がせたのだ
まゆ「縁壱お兄様ありがとうございます!嬉しいです♪」
縁壱「それは良かった」
その日の任務。新しい羽織で胸がイッパイのまゆがあっさり殺った。その心は『巌勝さんを忘れたい!!』だったが、それで鬼が斬れたのだから良いのだろう
まゆ「日の呼吸・陽華突!」
縁壱「調子が良いな(うた、すまぬ。私はまゆが好きだ…この子を護りたい…他の女子を愛することを、どうか許してくれ…)」
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