第3章 運命の歯車
・
ーその夜ー
日の呼吸を一日で覚え、自分の任務で囮になったどころか鬼を倒したまゆに、縁壱は何かご褒美をあげたいと思い問い掛けた
縁壱「何かお前に褒美をやりたい。希望はあるか?」
まゆ「良いんですか?私…は、新しい羽織りが欲しいです」
突然の事に困惑するもまゆは素直に答えた
縁壱「では明日買いに行こう」
まゆ「はい!やったぁ〜♡」
今着ている羽織りは巌勝がまゆの十三の誕生日に送ったものだった。この羽織りは別れる少し前、二人で幸せになれると信じていた時だった
まゆ「(着てたら駄目だよね。だって巌勝さんの心も全て、他の女の人のモノなんだから…)」
巌勝との思い出を全て捨てたのだから、本当は着てくるべきじゃなかったのだ、と後悔している
まゆ「(これは箪笥にしまおう…本当に思い出になるその日まで)」
縁壱はまゆの様子に気が付き声をかけた
縁壱「どうかしたか?」
まゆは「あっいえ、羽織の色とかを考えてたんですが、どんなのが似合うか自分ではわからなくて…」と誤魔化した
縁壱は、シュンとしているまゆの頭を撫で、目線を合わせた
縁壱「まゆなら何でも似合うと思うが…」
まゆ「良かったら見立てくれませんか?縁壱お兄様が見立てたのを着たいです!」
縁壱はその手の事に関して、自分が大分と疎いのを自覚している。暫く悩んでいたが、まゆの為だと思い引き受けた
縁壱「………私の見立てで良いのか?」
まゆ「むぅ…縁壱お兄様が似合うと思ったのが良いのです!!」
縁壱も男として、女子にそこまで言われたら期待に応えないわけにはいかない
縁壱「わかった、明日は稽古はせずに朝から店を廻ろう」
まゆ「はい!ワクワクします♪」
縁壱「私もだ…明日も早い、寝るぞ」
そして気持ちを自覚している以上は例え弟子としてでも、自分が贈った物を常に身に着ける事が嬉しかった
・