第26章 帰宅後の宴
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黒死牟「まゆ!!まゆ!!(私の声が聞こえてない…不味いな…)」
叫び続ける結界鬼を惚けた顔で眺める私。久しぶりだわ、この感じ。だから巌勝さんの私を呼ぶ声も私の耳には届いていなかった
まゆ「リカバリィ(回復)!!私自ら暴れないだけマシだと思いなさいな。ほら、まだまだよ〜アハハハハッ」
高揚感が全身を駆け巡る。私は嘗ての神魔戦争のおりに一度だけ経験した感覚に完全に飲み込まれ、高笑いを上げた
パシッ
まゆ「痛っ…何するのよ…」
黒死牟「いい加減にせぬか!!もう良いだろう。殺してやれ…ソレも元は人間。お前が守りたかった人間だ」
巌勝さんに叩かれて、漸く外の声が聞こえ始めた。どうやら隠もまだ到着はしておらず、先に来ていた隊士は気絶したまま。他には見られていない様だ
まゆ「嫌よ…」
黒死牟「今のまゆは鬼舞辻や他の鬼と同じだ。それとも魔族とは高位の存在であっても、そういうものなのか?」
まゆ「違うっ、私達高位の者は理性で本能を抑えるから…巌勝さん…」
抱き締められ、私の本能は完全に引っ込んでいった。そう、醜い悪魔の本性が…
黒死牟「グラウに食われ続けている鬼を見ろ。あれはまゆが望んだ形か?」
まゆ「こんなの違う…こんな事がしたくて人間界に来たんじゃない…」
黒死牟「ならば早く鬼灯殿の所に送ってやれ」
巌勝さんの言葉と私を見詰める眼差しに大きく息を吸い込むと、静かに結界鬼を見据えた
まゆ「グラウ、もう良い。月の呼吸 漆ノ型 厄鏡・月映え!!」
結界鬼は「やっと…終わ、れる…」と言いながらサラサラと灰になって消えていった。血に酔った悪魔程、質の悪いもんは無いわね…
黒死牟「落ち着いたか?」
まゆ「まだ、胸がザワザワしてる。血に酔い過ぎたみたい。それよりも治癒が必要な子は?」
黒死牟「数人の村人と隊士は治癒札で生命は助かった。しかし、3人程手遅れに…」
まだそんなに時間は経っていないわ。だとしたら…
まゆ「グラウ!手遅れな人を此処に!リザレクション(復活)ならまだ間に合う筈よ!」
黒死牟「本当か!?」
グラウ「グァッ(御意)!!」
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