第16章 私の我儘【天国地獄魔界編】
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鬼灯「こんにちは、秦広王。こちらが継国縁壱さんですね?」
秦広王「鬼灯殿か。いかにも、この者が継国縁壱だが如何なされた。まゆ殿に伝言してくれたのかな?」
縁壱は鬼灯に一礼する。死の直前の記憶を手繰ると鬼灯という名前に覚えがあった
鬼灯「伝言は致しましたよ。縁壱さん、事情はお聞きですよね」
縁壱「はい…」
★今の縁壱の今の姿はまゆと結婚した当初の二十代後半位です。まゆへの想いが強い為、当時の姿に戻りました
鬼灯「まゆさんから手紙を預かって来まして…どうぞこちらです」
縁壱「ありがとうございます…」
鬼灯が縁壱にまゆから預かってきた手紙を渡すと、縁壱は直ぐに読み始めた
縁壱さんへ
お子さんの魂の話は秦広王から聞いている事と思います。私が六十年前に魔族に戻った時、同僚が来て外に話しに行ったよね。その時に縁壱さんの寿命と、今回の話を聞いていたので私は知っていたのです。ずっと黙っててごめんなさい
私にとって縁壱さんとの時間が凄く大切でした。本当にありがとう。私は六十年以上もの長い間、縁壱さんに沢山愛してもらいました。愛し愛され幸せな日々を過ごしてきたの、だから私は満足しています。そして私は魔王に戻らなければなりません。縁壱さんも、今やらなければならない事をしてください。どうか、お幸せに。さようなら
まゆより
縁壱「まゆ…うっ……なんでっ…また会えると言ったではないか!」
縁壱は人目を憚らずに声をあげて泣いた。流石に秦広王と鬼灯は心が傷んだのか、掛ける言葉が無かった
縁壱「私は今でも…こんなにも愛してるのに…」
愛し合っているのに離れなければならない二人に、安らぎが訪れる事を願って鬼灯はその場を後にした
秦広王「縁壱殿、子供の魂が成長して賽の河原に行ければ多分会えると思う。何年何十年かかるかはわからないがな…」
膝を着き悲しみに暮れている縁壱を見兼ねた秦広王が、まだ確定事項ではないものの、十王会議の議題として上がっている今後の案を口にした
縁壱「秦広王様っ…それは真ですか…?」
縁壱が顔を上げると先程とは一変し、希望を宿した瞳をしていたのだった。その表情に幾らかホッとした秦広王は話を続ける
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