第16章 私の我儘【天国地獄魔界編】
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【時は遡り約六十年程前】
魔族に戻ったまゆはルシファーの気配を感じて外に出た。ルシファーならば交渉次第では、まだ人界に居られると踏み気合いを入れて男の前に姿を現した
ルシファー『よぉ』
まゆ『久し振りね』
ルシファー『冴えねぇ顔してんなぁ。まっ安心しろ、俺は別に迎えに来たわけじゃねーよ。旦那と一緒に居たいんだろ?』
まゆ『うん、ずっと一緒に居たいの…』
ルシファー『なら話は速いな、早速要件を伝えよう。旦那が生きている間だけは人界に居る事を許可する。ただし旦那が死んだら、お前はもう旦那に会うな』
まゆ『別に魔族と亡者が会ってはいけないなんて規約は無いわよ?』
ルシファー『単刀直入に言う。お前と一緒になる前に嫁さんも子供も鬼に殺されたのは知ってるな?その子供が魂の成長を止めちまっててな…賽の河原にも行けない』
まゆ『そんなっ…』
ルシファー『だから魂を父親と母親で育てなければならない。要するに父親と母親が揃ってたら魂が成長するんじゃないか、というのが閻魔庁の見解だ。これは従わなくても良いが、お前に無視は出来ねーだろうよ』
まゆ『わかったわ…小さな魂が転生出来ないなんて可哀想だものね。子供に罪はないから…』
約六十年前、この様な会話がなされていたのである。よって縁壱を元の妻、うたの所に戻した上で子供への影響を考慮して、今後は縁壱に会ってはいけないと判断されたのだ
鬼灯「伝言はありますか?」
まゆ「少しだけまってちょうだい、文を書くわ…」
まゆは鬼灯に墨と筆、紙を持ってきてもらい、縁壱に文をしたためた
鬼灯「お腹の子は一人で育てるおつもりですか?」
まゆ「………知ってたのね。勿論一人で育てるわ!縁壱さんには内緒よ?私の我儘だから…」
鬼灯はまゆの言葉に了承すると、縁壱が居るであろう秦広王の所へ出向いた
縁壱は裁判無しで天国行きが決まっている。その為に秦広庁で、うたと会わせて天国へ送るという段取りなのだ
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