第15章 最初で最後の嘘
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まゆ「もう止めてよ…」
黒死牟「なっ…………」
声まで酷似しているだと…女が喋ったのはたった一言だが、私の記憶の中にあるまゆの声そのものだった
まゆ「これ以上傷つけないで…お願いだから…」
美月も似ていたが、それどころの話ではない。しかし有り得ぬのだ、まゆなわけがないだろう?
黒死牟「私は黒死牟という。お前の名は?」
まゆ「…混沌の龍」
女は混沌の龍だという。それが名だとでもいうのか…
まゆ「一ノ瀬、ご遺体の埋葬しなぁ!グラウ、鬼灯君にお迎え課をよこさせろ」
一ノ瀬「御意に」
グラウ『グゥー』
女は声色が変わる、まるで違う人物のようだった。女が何かを呼ぶと大昔の退魔師の様な格好をした男が現れ、どこからか人ではない声が聞こえてきた。人ではない声の主は辺りを見回しても居らぬのだ
何者なのだこの女は…まゆのようでまゆでない。気配すら感じさせない得体のしれない女に身の毛がよだつ
恐怖感に襲われると共に何故だか親近感も湧いた。私の中にある気配と繋がっているような感覚がしたのだ
黒死牟「混沌の龍よ、お前は一体何者なのだ…」
まゆ「内緒…また会えるわきっと。次は逃さないから覚悟するのね」
女は刀を鞘に納め腕を組んだ。私は何故にまゆと酷似しているのかを知りたかった。顔や声は兎に角、独特の癖は真似出来ぬもの
黒死牟「もう少しお前を知りたいのだが?それと、顔を見せてほしい…」
まゆ「ふふっ、口説いてるのかしら?」
口説く?そんなわけなかろう。私は今でもまゆを求めているというのに…
黒死牟「私が愛しているのは縁壱の妻であったまゆだけだ。年齢からするに、お前にとっては曾祖母辺りか…。まゆは生きておるのか?生きておるのなら伝えてほしい事がある」
まゆ「生きてるけど…で、何よ(巌勝さん…ごめんなさい、まだ私は会えないわ…)」
せめて愛していると告げたいだけだ。想いを想いで返すのは礼儀だろう…?
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