第15章 最初で最後の嘘
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縁壱「まゆは愛らしく優しい…」
一ノ瀬「真に偶々なのだが、鬼灯殿と閻魔大王が浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)で、お前が縁壱殿に甘えている所を見てしまってな。天変地異が来るとかハルマゲドンとか3K神話が崩壊したとか言って怯えておったぞ?」
まゆ「失礼ね、今までこの私を落とせる男が居なかっただけよ。3K神話ですって?はっ、甲斐性の無い男ばっかりだったからじゃない。人のせいにしないでほしいわね!」
一ノ瀬は「猫全外ししやがった」などと悪態をついている。一方、縁壱は「そんなまゆも愛い」と相変わらず頭を撫でていた
まゆ「んふっ、縁壱さんしゅきぃ♡」
縁壱「私もまゆを愛しておるぞ」
一ノ瀬「ゴホンっ、話を戻しましょう。縁壱様の兄上殿は、ここから南西にずっと行った所の七重の塔付近に潜伏しており、今はグラウがアストラルサイドから監視しております」
縁壱とまゆは一ノ瀬の言葉に表情を変え、真剣に話をしだした。まゆにとっては悲しみしか無く『救いは何処にあるのか』と、自分が知る神々と自分自身を恨みがましく思ったのだった
愛する者が二人、片割れを道連れに今日逝ってしまうのだから
縁壱「兄上は夜になれば出て来ると…」
まゆ「グラウと視覚を繋いでおくわね」
一ノ瀬「グラウからの連絡があるまで視覚は良いだろう、行く時はまゆの空間移動で行けは良い。私は忙しい故帰る、何かあったら呼べ…ではな」
一ノ瀬は帰って行き、縁壱とまゆは二人きりになった。まゆの顔色は優れず、気分は落ち込んだままだった
まゆ「ねぇ、本気なの?縁壱さんは今日…」
まゆは『今日で寿命が尽きる』と言おうとしたが途中で止めてしまった。自身も認めたくなくて苦しいのだ
縁壱「どうした?」
まゆ「ううん、今日の夕餉は何食べたいのかなって!」
縁壱は分かっている、今日自分が黄泉に旅立つ事を。まゆも分かっていると察したが、言えば泣いてしまう事が容易に予測できた為に、敢えて言わなかったのだ
それは、妻には笑っていて欲しいと願う縁壱の気遣いだった…
縁壱「一緒に作ろうか」
まゆ「うん!!」
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