第15章 最初で最後の嘘
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縁壱「兄上を連れて逝かねばならぬ…きっと一人では寂しがるだろうから…」
まゆ「少しだけ考えさせて…」
鬼殺隊を辞めても美月が嫁に行ってからは、縁壱はまゆが「お願いだから鬼狩り止めて」と泣いた八十の歳まで単独で鬼狩りをしていたのだ。尚更もう鬼の事は良いではないかと思う
まゆは暫く目を瞑り考えた。自分はどうしたら良いのかを…
老体に鞭を打ってまで巌勝と戦ってほしくない。しかし出会って八十年余り、夫はこれ程までに自分に頼み事をしたことが無いのだ。だからこそまゆは夫の願いを叶えたいとも思う
まゆ「わかったわ。使い魔に捜させるから少し時間を頂戴…」
縁壱「ありがとう…わがままを言ってすまない」
縁壱はまゆの頬にそっと触れ、まゆは縁壱の手を自分の手で包み込んだ
まゆ「わがままなんかじゃないわよ。今使い魔を呼び出すわね。グラウ来い!」
まゆが使い魔を呼び出した。使い魔の名は「グラウ」という、グラウはメタリックな深い青色の黄色い眼をした西洋のドラゴンだった
グラウ「グルルル…」
縁壱「これが使い魔というものか…何と凛々しい事か」
縁壱は初めて見たまゆの使い魔に、一瞬だけビックリするも冷静であった。そしてグラウの姿を褒めつつ眼を輝かせていた
『男の子は大概ドラゴンが好き!』なのは、どの時代も変わらないのかもしれない
まゆ「巌勝さんを探してほいの、一旦魔界へ行って一ノ瀬にも探すように伝えて。今日中に見つからなければ鬼灯君を頼りなさい」
グラウ「グァー」
縁壱「グラウ殿宜しく頼みます」
グラウは縁壱に返事をするかのように「グゥ」と、もう一鳴きすると消えた
グラウに探すように伝えた一日半後、陰陽師のような服を纏った一人の男がまゆと縁壱の目の前に現れた
男の名は一ノ瀬道頼という元陰陽師である。一ノ瀬はまゆに跪いて丁寧に報告をしていくが、まゆは部下の態度に訝しんで顔を引き攣らせている
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