第14章 ある日の番外編【娘の祝言】
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黒死牟と美月が話している頃、縁壱とまゆは漸く屋敷を出て歩き始めた
まゆ「随分ゆっくり歩くのね。仕度もゆっくりだったけど」
縁壱「……たまには良いかと…………………」
こういった日にゆっくりはどうかと思うが、縁壱のせめてもの抵抗である。まゆは分かっているのか、クスッと笑って縁壱の腕に自分の腕を絡ませた
まゆ「ふぅん、進行方向には美月と巌勝さんの気配がするわ。もしかして今は会わない方が良いからかしら?(そんなに嫁に出したくなかったのね…男親は複雑だわ)」
縁壱「そういう事にしておいてくれ…」
縁壱の心情はどっちもだろう。それもまゆは知ってて聞いていた
縁壱「まゆは魔族に戻ってから随分と意地が悪い」
まゆ「そうかもしれないわね!まぁ、シテる時の縁壱さん程ではないわよ♪」
縁壱は『それが好きな癖に』と思うが口に出さず、立ち止まってまゆの額に口付けをした
縁壱「兄上の気配が遠ざかっていく」
まゆ「そうね、先を急ぎましょう」
黒死牟の気配が無くなると縁壱はまゆを抱き抱えて走り出す。黒死牟が二人の気配を察知出来なかったのは、二人が完全に気配を無くしていた為だった。元々縁壱は無我の境地にあり、気配も察知され難いのだが今は完全に消している
縁壱「着いてしまった……………」
まゆ「もぉっ速すぎよ!美月達より早く着いちゃったじゃない」
縁壱とまゆは駕籠が通らないような別ルートで、最短距離を全力で走ったのだ。煉獄家にアッという間に着いてしまったのである
煉獄家の門の前に立っていた隠が縁壱とまゆを招き入れ、花嫁の両親が座る場所に案内された。暫くして美月が着き、いよいよ祝言が始まろうとしている
【祝言】
まゆ「ちょっと縁壱さん!透寿郎さんよっ。っていうか泣き過ぎだからっ!」
縁壱「あ、あぁすまない。透寿郎殿、むっ娘を…よろしくお願い致します…」
透寿郎「まぁまぁまゆ殿、娘を嫁に出すのだ。男親なら当然の反応だな!ハッハッハ(縁壱殿がショボーンとして泣いておるだと!?反応が意外過ぎてこっちが焦る!!)」
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