第12章 縁壱の娘と素敵な伯父様
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まゆ「ねぇ縁壱さん、美月は幸せになるわ!今の私みたいに♪」
縁壱「あぁ…」
『ホントにこの男はぁー!』と思ったが口には出さない。辛いのはわかるから…
まゆ「これから私達の孫が出来て、また新しい生命を繋いでいくのよ。それは素晴らしい事だわ!娘が可愛いのはわかるけどさ…」
縁壱「わかっておる故あまり心配をするな。今夜は酒に溺れたい…付き合ってくれるな?」
二人は酒を酌み交わし、縁壱は今までに無い速さで酒を胃に納めていく。縁壱は自分が抱えている気持ちをまゆに吐露し始めた
縁壱「なぁ、お前は幸せか?兄上ではなく、真に私で良かったのか?今のまゆなら兄上と共に居られるのに…」
まゆ「幸せに決まってんでしょーが!言ったわよね…私は縁壱さんも巌勝さんも同じ位に、どっちも愛してるのよ。でも今の私は貴方と居て幸せなのよ!」
酔のせいなのか、娘が嫁に行ってしまっての悲しみ故か、縁壱は尚もまゆに食い下がる
縁壱「同時に愛するのは私には出来ない。私はまゆだけだから」
まゆ「ずっと疑っていたのね…」
縁壱はまゆの言葉にハッとする。愛してるのはまゆだけと伝えたかっただけであり、決して疑っているわけでは無いのだ。縁壱は言葉が下手なだけである
縁壱「違っ、違う!疑ってなどおらぬ!だが、時々怖くなる…今のまゆは魔族故に寿命が無い。老いていく私より兄上の方が良いのではないかと…まゆが離れていくのではないかと怖いのだ…」
まゆ「いい加減怒るわよ?私は最後まで貴方と居ると決めたの。どんなに縁壱さんが歳をとろうが一緒にいるって!永遠の時を生きる私にとって貴方との時間が凄く大切なのよ。永遠が欲しい位だわ…」
まゆは縁壱の寿命を知っている。何故かと言うと、魔族に戻った日に閻魔大王の第一補佐官である鬼灯からの伝言を、コキュートスの管理者ルー君が伝えに来たからである
まゆの言う『永遠が欲しい』とは、縁壱に自分と同じ存在になってほしいと言いたいが『永遠の命』を望んでいないと思い、言っては駄目だという葛藤があるからだった
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