第12章 縁壱の娘と素敵な伯父様
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『はい、私を強くしていただきありがとうございました…お世話になりました…幸せになります』
どうか幸せになってほしい。私とまゆの様に離れてしまわぬように祈っておるぞ
美月をもっと強くしようと思ったのは、娘に死んでほしくないが故。お前を守れる男なら良い
今夜は独りで酒でも飲もうか…娘の門出を祝う為に
私の袖を掴む手をそっと退けて立ち去ろうとしたが呼び止められた。美月は最後に質問があるのだと言う
『ねぇ、今でもお母さんの事愛してる?』
女の勘は鋭い…わかっていたのだな全て
私は…お前にまゆと過ごした稽古の時間を重ねていたのだ。まるで、あの頃のようだと…それも悟られていたのならば、正直に言わねばなるまい
SIDE RETURN【NO SIDE】
黒死牟は振り向き、今までに無い位に穏やかで綺麗な笑顔で告げた。どんなに月日が流れようとも変わらない気持ちを…
黒死牟「あぁ、私は今でもまゆを愛している。この先も変わる事は無い」
そう言い、黒死牟は走り出す。美月はその背中を見つめポツリと言った
美月「あんなふうに愛されたら幸せだぁ…」
【祝言当日】
今日は美月の祝言の日、朝から慌ただしく支度が行われていくが、縁壱は入り口に背を向けて座ったまま動かない。当日になって何をしてるのかとまゆが呼びに行くが無言だった
まゆ「縁壱さん、早く着替えてくださいなっ!花嫁の父がそんなんでどうするのよ!全くっ(すんなり送り出すかと思ったけど意外だわ…)」
縁壱「………………」
暫くすると、美月が白無垢姿で縁壱の部屋へと入ってきた。普段は煩い位喋り続ける彼女も、この日ばかりは流石に緊張しているようで静かだ
美月「お父さん、お母さん…」
美月が話し始めると縁壱の肩が揺れ、それをまゆは傍らでソッと見守る
美月「長い間お世話になりました…。ここまで育ててくれてありがとう、幸せになります。駕籠が来てるから先に出るね!」
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