第12章 縁壱の娘と素敵な伯父様
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【祝言前日】
黒死牟との最後の稽古の日。美月は未だに嫁ぐ事を告げられずにいたのだが、今日は言わねばと覚悟を決めて稽古場に向った
稽古の後、日が沈み月が出始めた頃。美月は意を決して黒死牟の前に立つ
美月「黒死牟伯父様、私、もう此処へは来られません…」
黒死牟「縁壱とまゆに…バレたのだな…」
美月は怒られると思い身を固くしたが、黒死牟は最初から縁壱とまゆを誤魔化せるとは思っては居ない。それにバレたからと言って怒る気もなかったのだ
美月「初日から父と母にはバレてましたよ…気配に敏感なんですね…」
黒死牟「だろうな…」
黒死牟は美月の頭を優しく撫でた。それに安心した美月は笑顔を見せる
美月「私、煉獄家へ嫁ぐんです。伯父様やお父さんの知る透寿郎様のご子息なんですよ」
黒死牟「そうか…煉獄家の男ならばきっとお前を大切にしてくれるだろう…幸せに、なれ…(私とまゆの様にはなるなよ)」
美月は黒死牟の袖を掴んで今までの礼を言いうが、その瞳は充血して潤んでいる
美月「はい、私を強くしていただきありがとうございました…お世話になりました…幸せになります」
黒死牟は美月の手を優しく退けて背を向け、寂しさが伺える顔を隠す。ずっと一緒に稽古をしていられるなどと思ってはないが、寂しいものは寂しいのだ
黒死牟「もう会う事もあるまい…お前の幸せを遠くから祈っている。では…」
そう言って歩き出そうとした所を美月は呼び止め、黒死牟は振り向かずに立ち止まった
美月「待って!最後に聞かせてください!」
【黒死牟SIDE】
私は美月を娘の様に思っている。今でもまゆと一緒にいて、子が女子だったのならば、きっとこんな感じなのだろうと…
私との稽古が今日で最後だと告げられた
『私、煉獄家へ嫁ぐんです。伯父様やお父さんの知る透寿郎様のご子息なんですよ』
★鬼殺隊や柱等については透寿郎や吉寿郎から聞いています
煉獄家の男なら美月を幸せにできるだろう。明朗快活で優しく心も強い透寿郎殿の息子ならば、まゆに似て言い出したら聞かないジャジャ馬な美月を、しっかり受け止められるだけの器はあるだろう。そう言えば透寿郎殿はまゆに惚れていたな…
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