第12章 縁壱の娘と素敵な伯父様
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一人で家に帰る迄の道中、美月は走りながら独り言を呟いていた
美月「見つからない様にしないと…約束守りますからね~黒死牟伯父様っ♪ムフフッ」
黒死牟と美月の約束事とは…。黒死牟に関する事を全て伏せる・一人で出歩く時は日輪刀を絶対所持する・日輪刀は父と母には見つからない、万が一見つかったら拾ったと言う。これが黒死牟と交した約束だった
屋敷に着いたが玄関まで持ち込むとバレる可能性大なので、庭から自分の部屋に行き、日輪刀を隠してから玄関から再び入って行く
美月「ただいま♪あ~疲れたぁ」
まゆ「おかえり、遅かったじゃないの。日が落ちるまでには帰ってきっ、あっ、コラァー待ちなさい!縁壱さん叱ってきてよ!」
縁壱「機嫌が良さそうだな。まゆは少々厳し過ぎる。あまり叱る必要はないのでは?鬼は心配だがな…」
縁壱に従い、その日は何も言わず夕餉を終えた。まゆは三歩下る様なタイプではないが、思うところが有るのか暫くは美月に言わない事にしたのだった
夜は夫婦二人だけの時間。まゆは縁壱の膝の上に座り、ギュッと密着している。これは結婚以来毎日欠かさず行なわれており、二人きりで居る時の基本なのである
まゆ「ねぇ、美月の様子がおかしいわ。何かあるわよ」
縁壱「確かにいつもと違うが…」
熱々な体制とは反対に真面目な話をしている縁壱とまゆ。この二人が気がつかないわけがなく、美月が玄関から入って来た時点で気が付いていた。ついでに、一旦自分の部屋の方に回ってから玄関に来た事も知っている
まゆは出来れば美月と巌勝を合わせたくない。多感な年頃の美月に、巌勝との事を知られるのが嫌なだけだったが…
まゆ「気がついているでしょう?」
縁壱「うむ…兄上と鬼の気配は分かっておる。だが暫く様子を見よう。兄上が美月を喰う気ならば、とっくに喰われている筈だ」
縁壱の意見はもっともだが、鬼でも黒死牟に関しては事情が違う。まゆは巌勝に掛けた制約の事を、うっかり言い忘れていたのだった
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