第10章 番外編ー黒死牟ー
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まゆ「あの晩、巌勝さんが気絶した後に…無惨は私の腹を殴って民家に叩きつけたの」
無惨様は約束を守ってくださったのではないのか?
まゆ「身体が瀕死になったから一時的に魔力を行使できる私が出て来て、身体を回復させようとしたんだけど…赤ちゃんは間に合わなかった。ごめんなさい…」
黒死牟「お前は何も悪くない…夫として、父として、全ては私の責任故…」
だから鬼殺隊を続けたのだな…すまない、私がもっと強ければ、縁壱のように強ければお前も腹の子も守れたんだ
まゆ「貴方のせいではないわ」
黒死牟「まゆ…」
悲しそうに微笑むまゆが痛々しくて、同時に自分自身が許せなくなる。大事な者達を守るつもりが、逆に傷付けていたのだから…
まゆ「巌勝さん、無惨に私達の赤ちゃん殺されてしまった。このまま従うの?」
黒死牟「……無理だな。従う理由も無くなった」
用心深い鬼の始祖の事だ、恐らく本能で生かしたのだろう…まゆはどちらにしろ無事だった、そして子は殺された。従う理由が何処にある?
まゆ「それならば私と魔界で暮らすか、人に戻るか…人に戻るのならば、無惨と人々から私に関する記憶と、巌勝さんが鬼となった記憶を消すから追われる事もないわ」
黒死牟「魔界で暮らす…お前が居ない世界に居て何の意味があるのだ」
意味など無い
一度目にお前と別れた時、私が鬼となり離れた時
私がどれだけお前を求めて涙を流したと思っているのだ
一緒に居る時ですら愛おし過ぎて
任務でも離れたくなくて
繋いでいる手を離したくなくて…
つまらない嫉妬をして一晩中お前を抱いていた
あの日に戻れるならと
どれだけ、涙を流したら
どれだけ、お前を想ったら逢えるのか
そんな毎日で…
今、目の前にお前が居る
愛するお前が居るのだ
まゆ「じゃぁ、魔族になってよ。私と同じ時間を生きてほしい」
黒死牟「魔族になる。まゆと同じ存在になりたい…」
今まで厳しかったまゆの顔が、私の大好きだった笑顔になった。すまなかった、お前も抱え込んでおったのに…
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