第10章 番外編ー黒死牟ー
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ふらつく身体、既に限界だった。まゆが膝を着きそうになったその時、身体が懐かしい温もりに包まれた
まゆ「巌勝さん…」
黒死牟「痣を…出したのだな…全集中も途切れている」
黒死牟はまゆを横抱きにして木に寄りかかって座ると、六つ目を悲しげに細めて血の気も無くなりつつある白い頬に口付けを落とした
まゆ「最期にど、うしても、巌勝さんに会いた、かったの…」
黒死牟「そうか…」
屋敷を出る二日前から全集中常中は切れていて喋る事すら苦しくて辛かったが、屋敷の者達の前ではそれを感じさせないようにしていたのだ。しかし流石に限界が来たようで話し方も途切れ途切れで苦しそうだ
まゆ「良かった、愛する、人の腕の中で…し、ねる…」
黒死牟は涙を流し、段々と脈が弱々しくなっていくまゆを見つめて壊れぬように優しく抱き締めた
黒死牟「死ぬな…」
まゆ「む、ちゃ、言わない、でよ…ごめん、ね。愛し、て、る」
その言葉を最期にまゆの身体から力が抜け、やがて呼吸が止まった
黒死牟SIDE
私は屋敷内ではなく外で稽古をしようと森の中に脚を踏み入れた
すると、懐かしく愛おしい気配が近くでしている。近づくと、そこには私が愛する妻の姿があった
足下が覚束ないし生気もない。確か今年二十五の歳。しかし私が鬼となる時は痣がなかった筈だが…
鬼殺隊を辞めていなかったのか?子供はどうしたのだ?と疑問ばかりが浮かぶ
全集中常中も途切れて顔色も悪い。立っているのも辛かろうと、私はまゆを横抱きにしてそのまま木に寄りかかる形で座った
堪らなく愛おしい妻に口付けを落とすのは一体どれ位ぶりだろうか
「最期にど、うしても、巌勝さんに会いた、かったの…」
最期などと言わないでくれ!お前は私の光だろう?
「良かった、愛する、人の腕の中で…し、ねる…」
死なないでくれ!なぁ、まゆ…頼む、頼むから…
「む、ちゃ、言わない、でよ…ごめん、ね。愛し、て、る」
私もお前を愛してる…
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