第9章 手が届く
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縁壱SIDE
縁壱「まゆっ?(まさかまゆが闘っているのか!?急がねば!)」
屋敷に着いた私が見た光景は、碧羅の天で鬼を斬り伏せた瞬間だった
鬼「頸が、俺の頸がぁぁぁ」
間に合った?否、私が守ったわけではない
縁壱「まゆっ!まゆっ!」
私が直ぐさままゆを抱き締めると、生者の証である体温を感じる
愛おしい妻と子が無事で居てくれた…
まゆ「縁壱さんっ!私は漏らしてないの!破水中なのよぉぉぉ赤ちゃん出るっ頭がぁぁぁ」
縁壱「産まれるのか!?」
頭が追いつかない…
まゆ「産まれるっていうか産まれてるところっ!ナウだよ!」
私は股を押さえて前屈みになっているまゆを急いで布団へと運んだ
縁壱「私は何をしたら良いのだ」
上手く頭が回らず右往左往している私に、まゆが指示を出す
まゆ「産湯っ桶ぇー!熱い湯と水用意してあるから調整いぃぁぁぁぁあ」
縁壱「わかった!」
まゆも混乱しているようだな…
釜には熱い湯があり、その下には空の桶と水の入った桶があった
まゆ「ふっ、ふっふぅー、ねぇ、もうすぐ出るよ?」
さっきまで混乱していたのでは?逆に冷静になったのか…
縁壱「これで良いか?」
まゆ「うん…むっ、縁壱さん手ぇー!んぐぐぐっぐぅー」
私は慌てて温度を調整し、産湯をまゆの元に持っていった。一瞬黙り込んだかと思うと私の手を握り締め、思いっ切りいきんでいる
まゆ「ふぅー、ん"ーーーぅ!縁壱さん!赤ちゃんを受け止めぇぇぇー!!はっ、はっ、はっ…んにゅーーぅ!脇に手を入れてちょっと引っ張って!はぁぁぁ?私のじゃねーよ!」
縁壱「わっ、わかった!」
肩まで出ている赤子の脇に指を差し込み引っ張ってやると、胎内から臍の緒で繋がれた我が子が出てきた
産まれたのだ。私とまゆの子が、この世に誕生した…
まゆ「あーっスキッリした!縁壱さん、臍の緒切って〜日輪刀で良いや!」
縁壱「鋏で切ろう…」
処置を済ませ、元気な産声を上げる我が子を産湯に浸からせた
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