第9章 手が届く
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縁壱「鷹男、影子。頼んだぞ…まゆは言い出したら聞かないから…」
鷹男・影子「任セロォォォ!!」
まゆ「ふふっ、行ってらっしゃい!お父さんお仕事頑張ってって♪」
まゆが大きな腹を擦りながら「行ってきます」と玄関に立つ縁壱に手を振った
縁壱「では行ってくる…(まゆの事は信用しておるが気が気でない…難しいな、人の気持ちは…)」
その晩、お産が急激に進む事となる
縁壱が任務に出てから、子宮の収縮が一定時間で来るようになったり痛みも強まったが、まだ耐えられる位なのでゴロゴロして過ごしていた
まゆ「うっ…ふぅー、ふぅー、ふぅー(縁壱さん任務中だし、私はまだ大丈夫!)」
まゆは、ふぅーと息を吐いていきみ逃しの真っ最中だった。尻からツーンと上ってくる何とも言えない感覚と、いきみたい衝動がまゆを襲う。この時点で赤子を出そうとすれば、何処とは言わないが絶対に裂ける為、只管いきみ逃しに没頭する
まゆ「んーっ、ふっ、ふっ、ふっふぅー…治まると何とも無いんだよなぁwww…………ん!?(鬼の気配…こんな時に…)」
なんと運の悪いことか、こちらを目掛けて近づいて来る鬼の気配を感じる。まゆは壁に掛けてある自分の日輪刀を持ち鞘から抜いた。草履を履き玄関先から飛びだして構え迎え撃つ
縁壱へは既に鷹男が知らせに行っている。まゆとて元鬼殺隊だ、おめおめと殺されるわけにはいかないだろう
影子「大丈夫ナノー?」
まゆ「やるしかないでしょ…縁壱さんに再び同じ絶望味あわせたくないっ!(まだ出て来ちゃダメだからね…お母さん頑張るから、お父さんが来るまで少し付き合って!)」
鬼「うへっ、お前鬼殺隊か?うへっ、その腹で日輪刀持ってても怖くもなんともねー。うへっ、子供ごと喰らえるなんて俺はついてるなぁー!満月の晩は腹が減ってしかたねーんだよ」
鬼はゆっくり歩き涎を垂らしながらまゆに近づいてくる。その鬼は二本角で目玉が半分飛び出ている異型だった
まゆ「月の呼吸 伍ノ型 月魄災渦!(あまり踏み込めない…だって赤ちゃん出そうなんだもん!!)」
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