第9章 手が届く
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政孝「熱々だな…して縁壱君、いつからまゆを…そのっ、す、好きに…」
縁壱「あ…はい、まゆが最終選別に向い再開した日、顔の愛らしさや声、表情と仕草、どれもが私を魅了した…妻と子を亡くしてから止まっていた私の時間が動きだしたのです…」
百合「運命ね!!」
まゆ「結構前なのね///あっ、お腹空いたでしょ?ご飯食べよう!」
結婚の承諾を得た二人は胸を撫で下ろす。巌勝が鬼となり、まゆとの結婚生活が終わっている為、正直少しは反対されると思っていたのだ
百合「ところで悪阻は大丈夫なの?ご飯食べられる?」
まゆ「正直キツイよ、吐き気と眠気が凄くて…」
縁壱「無理はするでないぞ、私の膝で寝るか?」
政孝「まゆよ、何かあれば言いなさい。男にはわからんからの!」
政孝は過去、長男である茂が百合の腹に居る時の事。悪阻で苦しむ百合に対して「飯食ったら治るだろう!何が食べたい?」と、言ってしまい殴られたのだった
まゆ「うん、お言葉に甘えて寝かせてもらうね」
縁壱「あぁ、おやすみ」
百合「あらぁ〜素敵な旦那様ね♪」
政孝「うむ『妊娠中の妻は保護せよ』と、よく言ったもんだな。縁壱君は実に出来た男だ!」
それ以来、政孝は余計な口を挟まずに、してほしい事は無いかと聞いてから行動するようにしていたのだ。茂から下の子達の時も、それを教訓にしてきており、子育ても積極的に参加していた
政孝「縁壱君、君は最後までまゆの側に居てやってくれ…」
縁壱「はい、私は居なくなりませぬ。兄が大変申し訳ありませんでした…」
政孝の言葉を聞いて脳裏を過ぎるのは兄、巌勝の事。事情が事情とはいえまゆを一人にしてしまったのだ、縁壱としても心が痛む
政孝「すまない、責めておるのではない。巌勝君はまゆと腹の子を守ろうと鬼の始祖に従ったのだ。私達はただ娘の幸せを願っておる、ただそれだけだ」
縁壱「何があろうと生命をかけて守り抜くと誓います。もう二度と、愛する人に手が届く幸せを離したくはない…」
百合「ふふっ、まゆちゃんは幸せね♪ほらほら、食事にしましょう!おめでたい事なんだから湿っぽくならないの!」
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