第9章 手が届く
・
縁壱は、それでも自分を愛してくれるなら構わないと続けた。それを聞いたまゆの瞳が揺れ、涙が頬を伝った。子の父親であり好きな男。まゆとて本当は一緒に居たいのだ
まゆ「私、直ぐに居なくなるよ?子供も縁壱さんも置いて逝っちゃうんだよ…」
抵抗など無意味と思わせる位の真っ直ぐな瞳に目を奪われ、遂に折れてしまうのだった。縁壱なら自分の亡き後も子供を大切すると確信し、自分は安心して黄泉路へ逝ける気がしたのだ
縁壱「あぁ、それでもまゆと一緒に居たい…俺と家族になってください。どうか、まゆと子供を守らせてください。頼むから…」
まゆ「縁壱さんには鬼殺隊とか関係なくて、痣とか寿命が見えてない人と一緒になってほしかったの。ねぇ、後悔しない?」
縁壱「後悔などするものか。お前が、まゆが側に居てくれるなら。我が子を、この腕に抱けるのなら…私は幸せだ」
強張っていたまゆの身体から力が抜け、縁壱に身を預けた。まゆが「私凄く我儘だよ?」と言うと縁壱は「とっくの昔に知っておる」と笑った
丸く収まった二人は朔也の元に行き、報告と挨拶をしてまゆの引退が決まった
まゆ「お館様、光柱・継国まゆでございます。継国縁壱を連れ、ご報告に参りました」
★まゆの名字については巌勝と離縁したわけではないので、未亡人扱いにしています
朔也「まゆ、縁壱、入っておいで」
朔也はこの三年の間で目も見えず、あまり布団から起き上がれなくなる位に病が進行していた為に枕元での報告となった
まゆ「失礼いたします」
縁壱「失礼いたします。ご無沙汰をしておりました」
朔也「二人共よく来てくれたね、起き上がるのを手伝ってくれるかい?」
朔也は『やっとか…』と思い、起き上がろうとして二人に手伝ってほしいと告げた。朔也は数年間この日を待ち侘びていたのだ、気持ちも一入である
・