第9章 手が届く
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縁壱「鷹男と影子から聞いた、私の子が腹に居るのだろう?」
まゆ「えっ、うん…でも何で来たの?私、責任とってとか言わないし…言う気もないよ…」
縁壱はまゆとの繋がりを二度と切れさせたくなかった。まゆにとっては愛じゃなくても一緒に居たいのだ。腹に自分の子が居るのなら尚の事、拝み倒してでも家族になりたいと思っている
縁壱「あの晩に言っただろう、愛してると…一緒に育てよう」
まゆ「ダメよ!痣出たの言ったし見たよね?時間がない。だからダメ!縁壱さんがまた傷つくから(私は先に逝くから…)」
まゆは内心嬉しく思っている。しかし、うたに先立たれた縁壱に、二度と伴侶を亡くす様な悲しい思いをさせなくなかったのだった
縁壱「わかってる。それでもまゆが欲しい、我が子を一緒に育てたい…まゆ…」
まゆ「離してよ」
まゆが抵抗をみせるが男と女の差だろうか、びくともしない。自分を真っ直ぐ見つめる視線にまゆは『本気なんだ…』と、決心が揺らいでしまいそうになっている
縁壱「離さない」
まゆ「帰って…お願いだから!」
押問答が暫く続く中、縁壱は更にキツくまゆを抱き締める。縁壱の本気と伝わる体温にまゆは『身を委ねたい』と思うが抵抗をみせた
縁壱「あの晩の事が気紛れでも嬉しかった。兄上を求めていたとしても…私はどうしようもなくまゆが好きなんだ」
まゆは縁壱の告白の言葉に心臓がドクンっとなったのを感じて抵抗が緩んだ。『私だって縁壱さんを…』と思い、切な気に目の前の男を見上げた
縁壱「愛してる、まゆ…」
まゆ「き、気紛れなんかじゃない…私は気紛れで男の人と身体を重ねたりなんかしない!!」
『まゆが愛してるのは兄上なはず』だと、縁壱は目を見開いてまゆを見つめ、次の言葉を待っている
まゆ「私、小さい頃から巌勝さんと縁壱さんが同じ位好きで、11歳になる頃に巌勝さんへの愛に気がついて…十七歳で縁壱さんへの気持ちも愛だって気がついて…最低だよね。巌勝さんは知ってて目を瞑ってたの」
縁壱「受け止める覚悟はある」
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