第9章 手が届く
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まゆ「言えないよ。その人は凄く傷付いてて、そこに私が居たから慰めてほしかっただけ。それを分かってて抱かれたから…相手に責任なんて無いの」
浦太郎「じゃぁ、僕じゃダメ?僕が赤ちゃんの父親になるよ。好きなんだまゆちゃんが…本気だよ」
いつものチャラさは無く、見た事のない程に真剣な表情でまゆを抱き寄せた。まゆは一瞬、何が起こったのかが理解できずに口をパクパクさせている
まゆ「あ………亀ちゃん、それはっ」
浦太郎「わかってるって、冗談だってばぁ!本当に真面目だなぁ(笑)その内ドツボに嵌っちゃうよ?だから一人で悩まないの!きっと相手はさ、まゆちゃんを受け止めるだけの器がある男だと思うよ♪日柱様だよね?」
浦太郎はまゆの頭を撫でて戯けた。女性に本気になった事がなかった浦太郎の心に、気がついたら深く入って来てしまった彼女。それ以来、ずっと目で追っていたのだ。だからこそ、巌勝と縁壱から心を奪う事など出来るわけがないのは嫌でも分かってしまう
まゆ「うん…知ってたんだね。でもね、私には時間がない…あの人は、縁壱さんは例外だから…」
「まゆちゃんらしいや」と浦太郎は納得し身体を離した。まゆはニコリと笑い、ありがとうと言って頭を下げる
浦太郎「子供は皆で育てよう。ほら、僕は大体医務室に居るしさ、兄弟多かったから子守は家でしてたから任せて!お妙ちゃんと真希ちゃんとか、先輩だって協力してくれるよ!」
まゆ「うん!私ね、お腹に宿ってくれた赤ちゃんを今度こそ産みたいの。例え一人でも…だけど皆が一緒に育ててくれたら百人力だね♪」
浦太郎「そうだよ!その意気だ(笑)」
浦太郎とまゆの話を、鎹鴉専用の小さな枠の外から聞いていたのは鷹男と影子だった
鷹男「縁壱ニ知ラセルベキダロウナ。影子ハドウ思ウ?」
影子「賛成ヨ。まゆハ何デモ一人デヤロウトシ過ギヨ…嘗テノ私ノ主ガ愛シタ女ガ不幸ニナルノハ解セナイワ」
鎹鴉二匹は縁壱の住まう場所へまゆの妊娠を知らせるべく、大急ぎで飛んでいった。まゆと縁壱が幸せになる為に…
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