第8章 運命か必然か
・
私は人を喰えぬ分、その魔族の魔力を使えるらしい…しかし、私の中にある気配は無惨様とまゆのもの。第三の気配は無いのだ、それは何故だろうか…?
考えても解らぬ疑問に思考を委ねるのを止めて稽古を始めた。強くなれねばならぬ、無惨様のお役に立たねばと自分を奮い立たせて一心不乱に木剣を振るった
SIDE RETURN(NO SIDE)
縁壱の処遇については、まゆが目覚めて直ぐに隼人から聞いたので知っている
まゆ「良かった…」
隼人「うむ、誰も悪くは無いのだ。妥当な判断だろう」
まゆは巌勝が鬼になり、腹の子が死んでしまってから十日程で任務に復帰した
朔也や他の柱や友人は止めたのだが、何かしていなければまゆ自身が潰れそうだったのである
朔也「まゆ、もう暫くは休んでて良いのだよ?今は静養が大事なのだから」
まゆ「お気遣いありがたき幸せ。しかし、何かしていなければ私は…今にでも…消えてしまいそうなのです…」
まゆがここ迄言うのだ、きっと肉体よりも精神が辛いのだろうと判断して任務に復帰させた
朔也「分かったよ…でも当分は軽い任務からね。それと月に一度、縁壱に給金を届けに行ってほしいんだ」
まゆ「ありがとうございます。では、これにて御無礼致します」
縁壱の給金を届ける仕事も任せたのは二人は会うべきだと考えたのだ。縁壱ならば必ずまゆを癒やし、幸せに出来ると思っての事だ
縁壱自身が気が付いたのは少し先だったが、実を言うと縁壱がまゆを女として好いている事は、まゆを保護した時の最初の報告で分かっていたのである
「幸せを掴んでもらいたいものだ…縁壱とまゆなら、きっと最後まで寄り添って生きていける気がするんだよ…」と、朔也の独り言が発せられた。それは誰にも聞かれる事はなく、静かな部屋に吸い込まれる様に消えていくのだった
・