第8章 運命か必然か
・
無惨「ならば良い。期待しているぞ、黒死牟。私は他の屋敷を手に入れた故、お前にこの屋敷を譲ろう」
黒死牟「何から何まで、真に申し訳ありませぬ…」
無惨が去った後の黒死牟は独り想いに耽っていた
黒死牟SIDE
まゆ…お前は今何をしている?
何を想って過ごしているのか…甘えたがりで寂しがり屋のお前は泣いているのだろうか
それとも腹を撫でて将来を思い描いているのだろうか…
私は夫として、父として、もう側には居てやれないのだ。どうか、お前達に安らぎが訪れるよう祈るしか出来ぬ…
まゆ…あぁ、お前に会いたい
黒死牟「私はなんと弱い男なのか…」
私は弱音を口にした。鬼になった以上は本来なら人の心など捨てねばならぬのに捨てきれなかった
今も昔も、これからも、まゆを愛する気持ちは変わらない。例えお前がこの先、他の男を愛したとしても…
黒死牟「まゆ、愛してる…愛してる…」
私は何度言っても言い足りないであろう言葉を口にする
もしも今でもお前と一緒に居られたのなら、愛してると言ったのなら、お前はこう言うのだろう
『私も巌勝さんをずっと愛してるよ♪だからね、巌勝さんとの赤ちゃんが私のお腹に居る事が嬉しくて…男の子でも女の子でも、きっと凄く可愛いよね♡ね、お父さん?』
そして私はこう答えるのだ
『そうだな、お前が可愛いから絶対可愛い。ふふっ、まゆが母親か…今日から禁酒を頑張ろうな、お母さん?』
まゆは『がんばります…』と眉毛を下げて困った様に笑うのだろう
まゆの愛らしい笑顔が目に浮かび、私は独りだけのこの部屋で、頭の中のまゆに微笑む
私に痣も目に見えた寿命も無く、無惨様と出会わずに居たのならば…お前と一緒の時を過ごし、やがて腹の子が産まれたら…お前と赤子を抱き締めて言いたかった
『私の子を産んでくれて、家族になってくれてありがとう。私は幸せ者だ』と…
・