第2章 再演
「……!」
汗だくで目覚める。まだ朝の四時なのに。手元にあるデジタル時計の日付を確認する。
「あれ……?」
おかしい。電波時計のはずなのに三日前の日付を指している。焦ってスマホを開く。これも三日前。冷や汗が伝う。
結局そこから一睡もできず、寝不足の目を擦ってリビングに降りる。テレビキャスターの言っていた日付も、日めくりカレンダーも三日前。
そして最大の謎は、私が無傷だということ。トラックに突っ込まれたなら入院は確実のハズなのに……。
結局、その日からの授業には集中できず、殺せんせーに顔を真っ赤にされて怒られる始末。体育では頭を打ち、軽く脳震盪を起こす。
けれど、決定的な事件は三日後に起こったのだ。
私は考えた。もし、もしもこれがタイムリープだとしたら右の車線を走っていたトラックにはねられるはず。思い付きで、いつも歩かないルートで下校をしてみた。コンビニの裏側を回る、人通りの少ないルート。
しばらくコンビニ裏で待ち伏せすると、轟音が鳴り響く。……あの時のトラックがあの時のように電柱に衝突していた。
ここにいたら死んでいた。震えが止まらなくなり、乾いた笑いがもれる。急いでその場を逃げ出し、家へと帰っていった。
「おめでとう、まさか君みたいなバカが一発でかわせるとは思っていなかったよ」
「砂糖の天使……」
その日の夜に、片腕を失った砂糖菓子の天使が現れた。どこか歪んだ景色になっているのは気のせいだろうか。
「ほら、早く直さないと君の自我が保てないよ」
どういうこと、と聞く間もなく天使が説明をはじめる。
メイドの部屋もこの映画館も、全て私の心らしい。そして、この映画館は私の心の歪みを、メイドの部屋は私のこの世界での思い出を表すらしい。信じたくないが、信じるしかない。夢も無意識の一つだ。
「ボクはキミが壊れない限りここにいるよ」
そう言って、自分の羽根を引き抜くと食べる。痛覚はないのだろうか。
「心配ないよアオバ、ボクはキミの味方だから。おやすみ」
その言葉と同時に視界が暗転する。反論の余地もないのか。まあいいか、次は苦情を言ってやる。