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転生少女の暗殺記録

第2章 再演


「順調に進んでるようだね」
「うるさいよ天使、ここは私の領域なんだけど」
 人の心に勝手に入ってくるなと思う。いいや、気づけばずっといるというのが近いか。
 あのメイドもそうだ。多分私が注意しないのをいいことに、あの真っ白な部屋を掃き掃除でもしているんだろう。掃除ロボットがいないからアナログなのだろうと勝手に推測した。
 もうあの二人は自分の心の住人としてとらえることにした。諦める。言ったところで出ていくようなタチではないだろうし、何か重要な情報が得られるかもしれないからだ。
「そうそう。それとね、僕を壊そうなんて思わない方がいいよ」
「自分で輪っか食べたり腕取ったり、羽むしってる天使が何を言う」
 いや、本当にそうである。すると天使はおかしそうにくすくすと笑い始めた。何がおかしい、と詰め寄ろうとすると、ぐわんと床が歪んだ。
「君の思うとおり、ここは君の心なんだ。僕もこの部屋も全部君の心。変に壊すと……、そうだなぁ……。お医者さん行きじゃない?」
 天使の発言にゾッとする。すると景色は途端に歪み、床も揺れ始めて立っているのも困難になる。そうか、今自分はとても動揺しているのかと冷静になる。
「君は知らない間に自死を選ぶほど壊れていたんだ。カエデ? との約束も果たせないかもなと思うほどにはね」
「……」
 目まぐるしく変わる景色に酔いそうになりながら、その場に膝をつく。私が? けれどいったい何に追い詰められて……。
「まあいいや。僕もメイドも君の味方。しばらくは安心していいよ」
 そうして、おやすみの一言といっしょに景色はブラックアウトしていく。

「……っ! まただ、またあの夢だ」
 連日の睡眠不足で、目の下の隈は濃くなっている。寝れた気がしないのに、時計の針は起きる時刻を指している。
 起きなきゃ、そう呟きながら箱で買ったエナジー缶の一本を飲み干す。けれど、残り数本になっていた。ため息をつきながら階段を下りていく。死なないように、今日も生きなければならないと思うと、憂鬱な気分になった。
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