第1章 鏡
どうして…こんな所に鏡が?
部屋見に来た時は無かったはず…
暫しスマホを耳に当てたまま固まっているとエレンが心配そうに問いかけてきた。
『おい…?』
その声にハッとして慌てて言葉を発する。
「っ…あ、ごめんごめん…いや、それがさ…姿見が壁に…」
『…姿見?』
「…うん…部屋見に来た時は無かったはずなんだけど…もしかして前の人の忘れ物?」
『…だとしても入る時しっかり部屋の確認や忘れ物なら不動産屋が持って行くはずだろ。』
エレンの言う通りだ。
不動産屋がこんな大きい姿見を見逃す訳ないし…
「だよね…」とエレンに返事を返しう〜んっと考え込んでいると、エレンからある提案をされた。
『なぁ、その姿見壁から外せれるか?』
「え?」
『いや、外せれるなら取り外して不動産屋に持って行った方が良いと思ったんだけど…何なら俺がそっちに行って外そうか?』
「そんな…申し訳ないよ。」
こっちに来て貰えるだなんて…距離もあるし…
『遠慮するなよ。友達だろ?困ってたら助けに行くのは当たり前だし。』
エレン…
その言葉に嬉しくて口元が緩む。
「ありがとう。とりあえず一旦、私が今外せれるかどうかやってみるね。」