第5章 絡まる視線
低い鋭い声色…。
ドクドクと心臓が慌ただしく高鳴る。
やっぱり…私が居ることというより視線とかに気付いてる?
未だにジーと疑い深くこちらを見つめてくる彼に心臓が落ち着かない。
見えてないはずなのに…何処か見抜いてるような目線。
このまま黙っててもいいんだけど…でも何故かそう思うより先に口が開き言葉を発していた。
「っ…あのっ…!見続けてしまってすみませんっ…」
普段よりも大きな声で鏡に向かって言えば、彼はさっきと変わらず鋭い視線を向け続けていて。
やっぱり…聞こえてる訳ないよね…。
鏡の彼から視線を外しホッとした反面、何処か寂しい気持ちもあって複雑な心境にため息をついた瞬間…
コンコンと指の背で鏡をノックされ、ビクッと肩が跳ねらせながら顔を彼に向けるともう一度声を掛けてきた。
厳しい声色じゃなく、優しい落ち着いた声色で…
『…別にいい。それよりもお前は誰だ?』