第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
バスターミナルに到着した俺たちは飲み物を買って列に並んだ。入り口で順に座席を教えて貰って中に入る。俺の前に並んでいる彼女が座席の説明を受けて、それに着いて俺も乗車した。
『1番後ろだって、ラッキーだね』
「まじ?ラッキーすぎるね。窓際と通路どっちがいい?」
『うーん、じゃあ窓際行ってもいい?』
「もちろんだよ好きな方座って。」
腰を下ろした彼女の隣に俺も座って、ただそれだけなのにドクドクと鳴る鼓動がどんどん大きくなる。ちゃんはバッグの中から首にはめるクッションを取り出してリラックスしてるけど俺は全然リラックスモードなんてなれない。
『角名くん?』
「は、いっ」
『やっぱり無理してる?』
「ちが…っほんとに無理はしてない。」
『顔赤いけど…体調悪い?』
「ぇあ、ううん…っ全然!ちょっと緊張してて…」
『緊張?あ、そっか皆に会うの久々だもんね。』
あ、そっち…?全然違うけど…。
まぁいいや。
「まあ…うん、うん。」
『じゃあこうしようよ。』
「うん?」
『みんなと集まる前に私が角名くんのおうちまで迎えに行くから一緒に行くのはどう?』
「えっ、ありがたいけど…あ、俺が迎えにいくからちゃんが家で待ってて?」
『でも私いつも一緒に行ってもらってるから…』
「いやあれは俺が好きでしてるからいいんだよ。一緒に行ってくれるだけで心強いから俺が迎えにいく。いい?」
『分かった、ありがとうっ』
まあ言われてみれば一年以上会ってない元チームメイトに会うのは少し緊張する、かも。
程なくして車内の電気が消えた。
『あ、消えた』
「待って声響いてるから…笑」
『ごめんね…ふ、ふふ…っ』
「ちょっとちゃんやめ…てっ、ふはっ」
『うん、わかってる。分かってるんだけど…っ』
隣で肩を揺らす彼女に釣られて俺も笑いが込み上げてくる。笑っちゃいけない状況に限って笑いたくなるのってなんなんだろ。
ぴと、と細い指が暗闇の中で俺の口元に触れた。
「っん」
『しー…だよ、しーっ』
「いやそっちが先に…っはい分かりました笑」
えええ、え?可愛すぎるのでは??
しーってなに?なになに?なんなの!?
指細い…俺の唇に触れました。3秒は触れた。
無理白目剥きそ。
暗くてよかった今死ぬほどニヤけてる…。