第2章 気付けば廃墟の中で
「ぎゃあああああ!!!!!」
「っ!」
男の悲痛な叫び声と共に、ヒロの前は一面赤で染まった。
そしてその中に一点だけ、黒があった。
その黒に向かって一歩踏み出すごとに“ビチャッ”という水たまりを跳ねたような音がするのを気にすることもなく、ヒロは黒いその人物を見た。
「赤い瞳……」
間違いない。
情報通りの人物。
「なんだ、まだ動ける奴がいたか」
軍の総帥―――――シキだ。
「殺す」
「威勢のいい狗だ」
見下しながら嘲笑うかのようにシキは言うが、その目は笑っていない。
まるで獲物を見つけた時の狩り師のような、冷たい目だ。
「…………」
それだけでもヒロにとっては充分なプレッシャーだ。
シキにはそれほどの気迫があった。
それを悟られぬよう、ヒロは冷静に二本の刀を構える。
だがヒロが構えるより先に、シキが動く方が早かった。
「っ……!!」
「良い反応だ。少しでも遅れたら今頃貴様の腕は地に落ちていたところだ」
とっさに右に避け、不意の一太刀を受け止めたヒロ。
シキの言葉に、汗が一筋流れたのがわかった。
この男は危険すぎると、体中がそう告げていた。