第1章 始まりは突然に
「この通りだ!!頼む!!」
『無理です』
「君の邪魔はしないから!!」
『今もうしてます』
放課後帰ろうとしていた千栞を呼び止めたのは陸上部の部長。
いきなり腕を鷲掴みして大声で「陸上部に入ってくれ!!」と叫んだ男である。
千栞はこの時点で振り払って帰ろうとしたが、
涙目で見られれば血と涙がある奴は大体話を聞く。
私も血も涙もあるので話を聞いた。
聞いたところによると2週間後に陸上部が大会に出るらしいのだが、部員不足により大会出場が難しいらしい。新人を雇おうにも時間が無く、経験者を探していた、との事。
そんな中、1人の陸上部員が
「此の前登校中にめちゃめちゃ早く走ってた人居ました!!
身長は160くらいで、髪は鎖骨よりの下くらいの人です!さすがに遠くて顔は見えなかったですけど…
走り方からして美人な子だと思います!」
と話し、その人を部員全体で探し、
それで見つけだしたのが千栞、という事だった
(ていうか走り方からして美人ってなんだよ)
なんて心の中でツッコミながら
『よくもまぁ髪型と身長だけで分かりましたね…』
若干引いている千栞を他所に部長は「似たような人全員に声を掛けた!!」とニコニコしている。
『残念ですけど、私家に帰って寝る義務があるので』
「何その義務!!お願いだよぉぉぉぉ
3年は今年で最後だし、いい結果で締め括りたいんだよぉぉぉぉぉ」
昇降口でおいおいと泣き出す部長。
みんなからの視線も集まって来ている
「あの女の人男の人に何したの…」
「なになに?カップルの喧嘩??」
「あそこまでして許さない女って居るのかね…」
根も葉もない言葉が飛び交う
とうとう千栞は痺れを切らして
『あぁもう!!分かりました!!
出ればいいんでしょ出れば!!!』
「本当か?!いやぁ、これで陸上部も安泰になった!!」
今すぐ帰りたい千栞を他所に部長はそ〜れそれそれと踊りを踊っていた。
(あの夢の続きを見ようと思ったのに…!)
結果、千栞の惨敗。