第1章 始まりは突然に
今日の千栞は気分が落ち込んだり上がったりしている。
気分が下がる理由の1つはこの前受けた数学の小テストが返ってきたことだ。
正直いってテストは返って来なくてもいいと思う。
いや、むしろ返ってくるなと言いたくなる。
今回のテストは調子良かった!と思ったのも束の間、
返った来た瞬間千栞のきらきらした目はハイライトがなくなり、闇と化す。
「千栞、大丈夫や、気にすることないで」
夏帆はいつもの様に慰めてくれるが、私は知っている。
夏帆が満点な事に。
『夏帆、満点でしょ』
「えっ?あ、えーっと、千栞と同じくらいやよ」
千栞ははっきり見た。数学担当の吉田先生は100点の人のみにだけVery Good!と書いてくれる。
100点の字は見えなかったが、Very Good!と書いてあった。
それに夏帆は分かりやすい。千栞と同じ点数ならもっと落ち込むはずだ。
『Very Good』
「うっ、」
『Very Goodって書いてあった』
「き、気の所為とちゃうかぁ」
『私の視力2.5!A判定!』
「そうやった…」
夏帆は「あちゃー」とおでこに手を当て千栞に追い詰められてぐうの音も出なくなってしまった。
前置きが長くなってしまったが、本当の落ち込む理由は別にある。
放課後の習い事だ。
「千栞〜、今日剣道なら一緒に行こやぁ」
そう、千栞は自分の通っている剣道の習い事が大嫌いなのだ。
下手とかそういう訳では無い。2段を取得したし、今は3段に向けて練習している(させられている)
何より、千栞は和より洋派だ。
JPOPより洋楽が好きだし、映画もハ〇ーポッターが一番好きだ。
なら英語が得意なのか、という話になるとそれはまた別の話になる。
千栞の母が武術を習わせるために小二の時に始めさせられた。
千栞はバレエなどが習いたかった。バレエは私の幼少期の頃の憧れであり、何よりバレエをやっている子は決まってモテた。
千栞はバレエがやりたいと当時泣いて叫んだが母には勝てず、結局今に至る。
それに比べ夏帆は華道と言うとてつもなく女の子らしい習い事をしていて、それはそれはもうちひろは羨ましくてならなかった。