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高嶺の花

第1章 始まりは突然に


倉坂千栞は些か変な子供であった。
幼き頃から身体能力が以上に発達しており、
足の速さでは学校1、いや、この街1かもしれない。

そんな彼女の得意とする教科はやはり体育であり、
数学などの頭を使う教科は全くダメであった。

頭を使うとこんがらがり、ちんぷんかんぷんになる。

何がどうなってそうなるのか、そもそもなぜそうするのか。
なぜ点Pは動くのか、
別に仲は悪くないが別々に家を出る兄弟…

数学の謎は深まるばかりである。



『セーフ』

そんなことを考えながら走ると気づいた時にはもう目の前に自分の机があり、そこに座り、いつも2,3分遅れて教室に来る担任の点呼に返事をするのだった。






「千栞また髪ボサボサなっとるよ」

点呼が終わって数少ない希少な10分休みに話しかけてきてくれたのは仲良くしている夏帆。
なんでも、冬生まれなのに名前に夏が入っている。
そんな夏帆は去年ここに引っ越してきて方言が抜けないのか標準語と混ざっていたり無かったり…

『あ、ほんとだ』

朝出る時に髪を結んだにも関わらず、必ず学校に着いた後にはボサボサになっている。
ホント勘弁して欲しい。

千栞は枝毛の無い艶がある綺麗な髪を解くと、
夏帆に髪を結んでもらう。

「千栞の髪はいつ見ても綺麗やねぇ。」

夏帆は手先が器用だ。
千栞があんなに手こずった編み込みも身を瞑ってでも編んでみせる。

「はいどーぞ。」

『おぉ…』

いつもの事ながら夏帆が髪を結んでくれる時は
まるで自分がお姫様かのように綺麗に仕立てあげてくれる。

「千栞は顔も綺麗やからねぇ、
より一層綺麗さが引き立つわぁ」

夏帆のしゃべり方は自分の祖母を連想させる。
多分語尾が似ているのだろう。
夏帆と一緒に居ると心がほわほわし、お母さんの懐で寝ているような安心した気持ちになるのであった。
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