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すれ違い恋【竹谷八左ヱ門】

第1章 動物苦手な彼女と動物好きな彼


その日一日。2人の距離が変わる出来事が変わる訳もなく、
放課後を迎えた。

八左ヱ門は深いため息を吐きながら、校舎裏にある生物小屋へ
向かい、後輩達と一緒に飼育している動物たちの世話をした。

後輩たちの前では一見元気そうに振舞う事はしているが、
どうしても椿姫の事が頭から離れずにいた。

後輩たちはそんな八左ヱ門の容姿に薄々と気付いてはいたが、
なるべく口を出さない様に唯々、見守っていた。

その一方では、椿姫は友達に言われた『好きな人』の話題を
只只管考えていた。

何故『久々知』の名を出してしまったのか…
それだけが頭の中でグルグルと回っていた。

椿姫と久々知は確かに『幼馴染』で仲も良い。
だが、『恋愛感情』を持っている訳じゃなかった。

第一、椿姫が気にしてしまっているのは久々知ではなく
八左ヱ門だったからだ。

友達が『好きだ』と言っている彼に対しての気持ちは
『恋』とかではないと椿姫自身は言い聞かせていた。

だが、高校に入ってから一度も話した事が無い彼を
ついつい、気にしてしまっていた。

椿姫にとって八左ヱ門は『良い人』と感じていた。
それは確かであった。だが、何故かそれだけじゃない。

椿姫自身も自分の八左ヱ門への感情に戸惑っていたのだ。
気付けば、八左ヱ門の視線を感じてもいた。

八左ヱ門と仲良くなるには『動物好き』を理解する。
椿姫は中々踏み込めない領域に頭悩ませていた。

もっと自分が動物への苦手意識をなくすことが出来れば
八左ヱ門と一緒に楽しく話していたのだろう。

それはきっと、八左ヱ門との距離が近付くという事だ。
今の椿姫には其処までの考えは思い浮かんではいなかった。

八左ヱ門も椿姫も『いつか話せるようになる』という
少しの淡い期待に似た感情があった。

そんな風に思いつつも、椿姫は自習をしていた教室を後に、
ふと正門へと向かう途中、八左ヱ門を見掛けた。

八左ヱ門もそんな椿姫を見掛け、軽く微笑んだ。

そんな八左ヱ門の微笑みに椿姫は少しドキっとした。
椿姫も軽く頭を下げて、八左ヱ門の横を通り過ぎて行った。

2人の心はまだまだ通うのには時間がかかる事だが、
少なくとも…少しずつはお互いの心の距離は僅かに
近付いてはいた。
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