第4章 友達以上恋人未満
横目で接客をするみなみくんを見た
「ご案内いたしますね」
接客態度いいし顔もいいし親孝行だし好かれて当然だと思った、ほんとうに勝ち目ないな
苦いコーヒーを飲みながら自分のダメなところをつくづく思い知らされる
「お待たせ、遅れちゃってごめんね」
「本当に待たせすぎだわ」
「だってかわいい姿で会いたかったもん」
カップルの声がやけに大きく響いて聞こえた
「いつものでいい?」
「今日は飲み物だけでいいわ」
「珍しい」
「ダイエット中なの」
俺も彼女がいたら、好きなあの子と付き合えたらあんな会話できたんだろうか
そんな妄想ばかりが広がる
「カルマくん、こっちもおいしいよ」
「あ、じゃあ一口ちょうだい」
「うん、僕もカルマくんのもらうね」
「うん……うま」
「こっちもおいしい」
俺たちがみんな食べ終わった頃にはこのお店も少し賑わってきた
「ここあと少ししたら居酒屋メニューに変わるんですよ」
「へぇすごい考えてるんですね」
「母はカフェやりたくて父は居酒屋がやりたかったのがきっかけですけどね」
「俺ちょっとお手洗い行ってくるわ」
席を立ち上がってお手洗いの場所まで歩いた
女性とすれ違った時にフワッと香った匂いはさっきの苦いコーヒーを甘く変える砂糖のように甘い匂いで、さっきまで悲しかった惨めだったこの気持ちを切り替えてくれるきっかけになった