第1章 出会いのお話
物珍しさに惹かれて、気まぐれに青年の肩を掴んで身体を傾けた。
東洋人系の色白な顔立ちで、精巧な人形かと勘違いするほど整っていた。
戦闘で負傷したのか、白磁のような肌に赤黒い血がこびりついている。
その醜い汚れすら、彼の美しさに歪な華を添えていた。
「死人か……」
まだ温もりがかすかに残っている。
心臓が止まってから、それほど時間が経っていないのだろう。
「……まだ戻せるが、さてどうするか」
迷いながら、指で口元の血を拭ってやる。
波長が合うということは、無条件でその身体を操り人形にできるということ。
自分の手駒にするにはうってつけの人材だ。
損得勘定をしながら、まじまじと青年を見下ろす。
青年はどこか満足げな顔をして、静かに眠っている。
笑んでいるようにも見えた。よほど望み通りの死に方をしたようだ。
世界はこんなにも荒廃しているのに、よくよく目を凝らすと花がぽつぽつと咲いている。
まるで奈落の底に落とされたとしても、希望を失わないとでも言うように凛と咲き誇っていた。
ふと興味が湧いて、青年の頭部に意識を集中させる。
いわばこの場所は心の中、思念や記憶を読み取るのも容易だった。