第1章 出会いのお話
――賑やかな面々が口寄せされたのを見送り、那霧は深々と溜息をついた。
こういうお節介をするから、フジに面白がられるのだ。
「……皮肉なものだ」
上着の内ポケットから、イタチの額当てを取り出す。
傷が思ったより深くないのは、偶然にもこれのおかげだった。
代わりに額当ては真っ二つに割れて、那霧の血でぐっしょりと濡れている。
「……この貸しは高くつきますよ、うちはイタチ」
元の世界に戻るため、精神を集中させる。
この世界にはもう用はない。が、イタチが今後どう生きていくのかは興味がある。
あれは興味深い玩具だ。暇潰しにはなるだろう。
願わくば、彼ら兄弟に光を。
他人でありながら、祈らずにはいられなかった。