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数奇なえにし【NARUTO】

第1章 出会いのお話


――丘の上にある隠れ家は、今日も子供達の声で賑わっている。
イタリアでは夏が過ぎ去り、山々が赤く色づき始めていた。
雨季が来ることを知らせるように、灰色の雲が垂れこめている。
間もなく降り出すだろう。


『I cannot lose a world for thee, But would not lose thee for a world.』


窓辺で読書をしていた僕は、英語で書かれた詩集をぱらぱらとめくっていた。
まともな教育を受けていない僕は、知識が圧倒的に足りない。
暇さえあれば手当たり次第に本を取り、図鑑だろうが辞書だろうが貪欲に読みふけっていた。


『Sorrow is knowledge, those that know the most must mourn the deepest――』


開け放した窓から、柔らかい匂いが漂ってくる。静かな雨が降り出していた。
雨音の心地よさに自然と瞼を閉じる。


先日、弟達が投獄されたという噂が聞こえてきた。
よりにもよって、次期ボンゴレボス候補の首を狙ったそうだ。
復讐者が管轄している牢獄は、易々と忍びこめるものではない。
助けることは、ほぼ不可能だ。


自分は結局、何年経っても闇の中から抜け出せなかった。
彼らに再会するのを躊躇って、放置してしまった結果だった。


兄らしいことはこれまで一切できなかった。
彼らのことを思い出さない日はなかったが、無事を祈ることしかしてこなかった。


このままあの子達は牢獄の中で一生を終えるだろうか。
せっかく外の世界に出られたのに、それはあんまりだ。
だが、あの子達の罪の重さも理解している。


もっと話しておけば。説得できていれば。
あの子の憎しみを受け止めてあげていれば。
鬱々とした後悔を抱えながら、ページをめくる。


今日は物騒な依頼も入ってきていない。
久しぶりにとても平和な日だった。
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