• テキストサイズ

数奇なえにし【NARUTO】

第1章 出会いのお話


施設を出た夜、生き残りの子供二人を連れて僕と弟は街へ出た。
犬と千種――二人ともいい子だった。僕と弟を救世主のように崇めて敬った。


まずは腹を満たすために盗みを働いた。
誰かがお金をくれるわけじゃない。それなら、奪うしかない。
自分の行為を正当化するつもりはないが、改めるつもりもない。
生きるために、盗みも殺しも必要だった。


「僕はここから別の道を行きます」


三人に背を向けて、僕は歩き出す。
自由を得るためには、まだ障害が残っていた。


「一人で行くんですか?」


弟はしっかりと僕を見据えている。
頼りなげに震えていた弟は、もうどこにもいなかった。


「ええ、一人で」


十歳足らずの少年でも、幻術を使えば思うままに生きることができる。
お互いにそれほど心配はいらなかった。
自分から沼に足を突っ込まなければ、不自由なく暮らせる。
しかし、そのためにはエストラーネオの名前が邪魔だった。


「それではお元気で」


弟の声は淡々としていたが、赤と青の双眸は寂しげだった。
僕は言葉を返さなかった。言いたいことがたくさんありすぎた。



もうマフィアなんてものに関わらず、幸せに生きなさい。
汚いものは見なくていいから、日の光を浴びて歩いていきなさい。



それは祈りでもあった。僕達がそんな風に生きられるわけがないと確信していた。
皮肉にも僕達を救ったこの眼は、闇ほど遠くまで見通せた。


/ 36ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp