第1章 出会いのお話
「ここは幻術で作った空間。しばらくは見つからないはず」
「休息をかねた作戦会議ができるってわけね。
誰だか知らないが、恩に着るよ」
カカシは、視界の端にオビトを入れ、疲れきった声で礼を言った。
クナイで岩に刺し止めていたオビトも一緒に連れてきたらしい。
「そういうのいいです。僕はもう行く」
「おい、どこに行くつもりだ?」
サスケはまだ警戒を解いていないのか、険呑な目つきを向けている。
「会いたい人がいる」
「待って、あなたもカグヤに狙われてるのよ? 危険だわ」
「余計なお世話。それに、本命はその二人だ。
ここにいるのが一番危ない」
「お前って、清々しいほど自己保身に走るね……」
「当たり前。僕は我が身が一番可愛い」
堂々と言い切った姿に、カカシも半眼になる。
彼はあらゆる世界で生まれると黒ゼツは言っていた。
それなら彼は異世界人なのかもしれない。
他所の世界で命をかけて戦えるか、と聞かれたら多くの人は首を横に振るだろう。
「お前の気持ちは分かった」
「おや、物分かりのいいことで」
「力を貸してほしいとは言わない。代わりに頼みがある。
カグヤについて、お前が知っていることを教えてほしい」
「見返りは?」
「なにが欲しい?」
品定めするような視線を真っ向から受け止め、決して目を逸らさずに見つめ続ける。
「……なら、その目玉をいただくとしようか」
長い指先が頬にあてられ、瞼の淵をゆっくりとなぞる。
形よく切られた爪がわずかに肌に食いこむ。
「調子に乗るのもいい加減にしろ」
サスケが怒気を孕んだ声で威圧し、那霧の手を払う。
「僕はどちらでも構いませんよ?」
那霧は、人を試すのが好きな男のようだ。
イタチの答えは決まっている。