第1章 出会いのお話
「なあなあ、六道眼ってなんなんだってばよ!?」
ナルトが至極当然の質問をぶつけるが、那霧はあくまでも黙秘を貫いている。
代わりに口を開いたのは黒ゼツだった。
「冥府ヲ見通ス地獄ノ瞳。
記憶ヲ引キ継ギナガラ、アラユル世界ニ転生スルマナコダ」
「……ふん」
「人デスラナイ化ケ物。
大人シク、カグヤノモノニナレ」
「……つまり、どういうことだってばよ?」
「私にも分かんないわよ!」
ナルトとサクラがそんなやり取りをしている一方、カグヤはますます闘気を膨らませる。
その目は、獲物を見つけたそれだ。
「僕はずっと……僕を生み出した母を、世界を恨んできた。
死んでもなお、この目と記憶から解放されることのない運命を」
「ソレモモウ終ワル。カグヤガ終ワラセテヤル」
「ははは、救世主気取りか」
前触れなく現れた三叉槍を、慣れた様子で一回転させる。
那霧は――笑っていた。
瞳に憎悪を宿しながら、口角をつり上げている。
イタチには、傷ついた獣が虚勢を張っているようにも見えた。
「お生憎様、僕は助けなどいらない。
人外らしく、外道を歩いてやる」
初めて那霧は激情を垣間見せた。
見えない圧で空間が捻じ曲がり、またもや周りの景色が変わっていく。
激しい眩暈が収まると、自分達はまた別の空間に飛んでいた。
壁も天井も白く、四角い部屋。まるで病院のように無機質な場所だ。
「ここはどこだ?」
カカシが尋ねるが、那霧は黙って膝をついた。
疲労が激しいらしく、呼吸が乱れている。
「その眼、負担が大きいようだな。大丈夫か?」
「ふん……」
汗を拭いながら鬱陶しそうに睨まれる。
切り替えが早いのか、あるいは取り繕うのが上手なのか、すっかり激情をひそめていた。