第1章 出会いのお話
「一発くらいなら援護してあげてもいいですよ」
「那霧……」
「せっかく拾ってあげた命、大事になさい」
その言葉の意図は分からない。
イタチが生きていることで、彼に得があるのか。
それとも、単なる善意か。
「いきますよ」
小気味よく指を鳴らす。
その瞬間、カグヤの周りに鋭い鉄の剣が何百と浮かび上がり、一切の容赦なく串刺しにした。
視認する間もなかっただろう。
――天照。
追い打ちをかけるように闇をも飲みこむ黒い炎がカグヤを包む。
「今だってばよ!」
「分かってる!」
唐突な出来事にナルトとサスケの行動が一瞬遅れる。
その隙をついて、カグヤは再び転移した。
邪魔だと言わんばかりに炎を振り払うと、剣も塵のように霧散していく。
「その力……」
カグヤが怪訝そうに那霧を振り返る。
その視線を受けて、彼はなんともいえない苦い顔をした。
「続けていきます」
またもや空中に何千もの刃物が形成され、マグマの中から巨大な植物が現れる。
この包囲網はさすがにカグヤも面倒だと感じたらしいが、今度はナルトとサスケも即座に攻撃態勢を整える。
蔓を足場にカグヤに迫るが、あと一歩押し切れない。
むしろ、ここまで押しているのにまだ勝機が見えてこない。
「あれが親戚なんて冗談じゃない」
那霧は乾いた笑いと共に呟く。
どういうことかと問おうした時。
「……っ」
空間転移したカグヤが那霧の左側に現れる。
白く長い指が彼の前髪を払い、赤い左目を見てカグヤが口角を歪め――。
「させない」
素早く那霧の襟首を引っ張り、須佐能乎で防御する。
――十拳剣。
「くっ……」
目にもとまらぬ速さで巨大な剣が振り下ろされるが、カグヤは恐ろしい反応速度でまたもや転移する。
イタチの判断が一瞬でも遅ければ、目を抉り取られていたかもしれない。
「……礼は、言いませんよ」
「そんなものはいい」
「ヤッパリアイツ、六道眼持ッテル!
コンナトコロデ回収デキルナンテ、ツイテルヨ!」
「黙れ、不愉快だ」
「……生意気は母譲りか」
カグヤの呟きが癇に障ったらしく青筋が立つ。
どうやら彼らと知り合い、もしくはそれに近い存在であるのは間違いないらしい。