第1章 出会いのお話
あの場にいた全員が、沸々と煮えたぎるマグマの上空に放り出される。
「……ちっ」
那霧は忌々しそうに舌打ちをすると同時に、巨大な鳥が足元に具現化する。
印を結んだ気配はない。これも彼の瞳術なのだろうか。
冷静に分析していると、隣から刺すような殺気を感じる。
「なんてことしてくれたんですか」
「質問がある」
「却下」
へそを曲げたのか、危機的状況にも関わらずそっぽを向いている。
大人びていると思ったが、中身はそれほどでもないようだ。
「これだけは聞いておきたい。俺の命はいつまでもつ?」
「……明日」
「分かった。あれを封印するまでもてば十分だ」
「……気に入らない人」
そんなやり取りをしている間にも、カグヤは襲撃してくる。
狙いはナルトとサスケだ。
目標が分かっている分対策も立てやすいが、横やりを許してくれるほど甘くはない。
「もっとカグヤに近付けないか?」
この鳥を操っている主は渋面を浮かべた。
鳥はカグヤが放つすさまじい攻撃の余波を器用に避けている。
「空間転移で逃げられるか、真正面から止められるかの二択ですよ」
白眼を有しているカグヤに奇襲は通じない。
それなら攻撃に加わって、一瞬でも隙を作り出す方がまだ勝機がある。
だが、那霧は乗り気ではないらしい。
「それなら俺だけで行く」
降りる準備に入ろうとすると、結んだ髪を無遠慮に掴まれた。
首が後方に傾き、痛みと不快感で隣を睨みつける。
「……おい」
「あなたのような人をせっかちという」
「悠長なことを言っている場合では……」
「死に急ぐなと言っている。
あなた、この戦いで死んでもいいと思ってるでしょう」
「……ああ」
サスケ達に聞かれたらなら嘘をついたが、彼には隠す必要もない。
案の定、同情でもなく哀れむでもなく溜息をつかれた。
「俺が息を吹き返したのは、このためだと思っている」
「はっ! とんだ自惚れ。
あなたが生きているのは、僕の気まぐれです」
「事実はどうあれ……」
「女々しい御託は結構」
いちいち癇に障る言い方をする。
知らず眉間の皺が深くなっていると、不意に那霧は片腕を軽く上げた。
カグヤとの距離は、ぎりぎり須佐能乎の攻撃が届くところまで来ていた。