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数奇なえにし【NARUTO】

第1章 出会いのお話


木ノ葉隠れの里は平穏な日々が続いている。
物騒な事件もない。
両親は相変わらず健在で、サスケものびのびと暮らしている。
なんの不満もない、満ち足りた生活だった。


「……あ」


ただ一つ気にかかることがあるとすれば、あの見慣れない青年のことだった。
ふらりとうちはの集落の中に現れては、すたすたと歩いていく。
イタチは彼の姿を見かける度に、激しい動悸に襲われるのだった。
追いかけようとしたこともあるが、足になにかが絡みついたように動けなくなる。
彼のことを知ろうとしてはいけないと、頭の中で警鐘が鳴り響いていた。


「……」


この日、初めて青年は足を止めて振り返った。
涼やかな青い瞳と視線が交錯する。
その瞬間、ぐらりと世界が揺らいだ気がした。

彼のことを知れば、この幸せが崩れると確信する。
根拠はない。本能とでもいえばいいのか。


「……」


青年はついてこいとでも言うように、イタチに向かって手招きをした。
そして、また踵を返して歩いていく。

追いつこうと思えば、いつでも追いつける。
どうして自分は、これほどまでにあの青年に脅威を感じるのか。

考えようとすると酷い頭痛がやってくる。
冷や汗が出て、指先から血の気が引いていく。

それでも、自分はあの瞳を知っている気がした。
どこか寂しそうで、他人を拒絶しているような眼差しを。


「……待て」


喉がからからだ。見えない壁でもあるかのようにその背中が遠い。
地面に縫いつけられたように重い足を無理やり動かす。
背後でシスイやサスケの声がしたが、今止まったら二度と走れない気がした。

一歩、また一歩と歩を進めていくと、急速に周囲の声が遠のいていく。
いつの間にか空が暗くなっていた。赤い月がぽっかりと浮かんでいる。

その内に人の気配がぱったりと途絶えた。
明らかに異様な空気を醸し出している。

嫌な汗が噴き出てくる。戻りたいと全身が訴えている。
まだ戻れる。まだ間に合う。そんな優しい声を振り払うように、青年の姿を探す。
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