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数奇なえにし【NARUTO】

第1章 出会いのお話


無事だった人々は他にもいたようだ。
この青年の弟もその中に含まれている。


「兄さん、無事だったのか?」


ほっとしたように黒髪の青年――サスケが近寄ってくる。
ナルトやサクラも目に見えて安堵していた。
今は一人でも仲間がほしい心境なのだろう。


「なんにしても、助っ人が増えてよかった」


銀髪の青年、カカシは冷や汗を拭った。
誰も彼も疲弊しているが、助ける気はこれっぽっちもない。
他所の争いに首を突っ込むほど、那霧はお人好しでも愚かでもなかった。


「残念」


軽く肩をすくめる。
イタチらしからぬ態度に、場の空気が一気に張り詰めた。


「中身はまだ夢の中」


乾いた風が吹いて前髪を揺らす。
他人の身体に憑依している時は、その左目にも六道眼が現出する。
異様な左目に気付いたらしく、それぞれがさっと身構えた。
特にサスケは顕著で、表情が憤怒に染まる。


「兄さんに何をした!」


「さあ」


「……目的はなんだ」


「会いたい人がいる」


「兄さんは無事なのか?」


「ええ、ご心配なく」


随分と短気な青年のようだ。
煽るように那霧は笑みを深くする。


「まあ……目的を達成したら、これは用済み」


「どういう意味だ?」


答えずに、意地悪く微笑む。
用済みという意味を理解したらしく、サスケは怒りのまま掴みかかってきた。


「貴様っ!」


サスケが怒っているのは、それだけ兄のことを大切に想っているからだ。
ここに至るまでに随分と遠回りした愚かな兄弟。
こんな風に感慨に耽ってしまうのは、自分も兄という立場だからだろうか。


「この世界の物語は、ある女を蘇らせるためだけにある。
あのマダラという男も、そしてこのイタチという男も哀れな傀儡」


……それでも、全てを知ってもなお、運命に抗うなら。
少しだけ、手を貸してやってもいい。

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