第1章 出会いのお話
――どこからか人々の笑い声が聞こえる。
肩を叩かれてはっと目を開けると、シスイが当たり前のように話しかけてくる。
イタチはなんの疑問も持たずに、シスイと会話を続けた。
うちはの集落は今日も平和で、子供達が駆け回っていた。
大人達も穏やかな顔をして、道端で話しこんでいる。
「兄さん、行ってきます」
幼いサスケがカバンを肩にかけて、元気よく走っていく。
「転ぶなよー」
シスイが笑いながら手を振る。
イタチもそれにつられて、軽く手を挙げた。自然と笑みが零れる。
「さて、次の任務のことは聞いてるか?
俺と二人一組で……」
シスイがまた軽快に喋り出す。イタチはそれに相槌を打つ。
昇った太陽が眩しい。今日は雲一つない快晴だ。
なにも心配いらないと思わせる。そんな爽やかな朝だった。
「……」
視界の端に見慣れない青年の姿が映る。
雑踏に紛れていても、奇妙なほど青年は浮いていた。
この辺りでは見かけない恰好をしているというだけの理由ではない。
全身に闇を纏ったような異様な空気を放っているのだ。
そこだけ陰っているような、言いようのない不安を覚える。
「イタチ、どうした?」
「……いや」
他の誰も、青年を気にかけていない。
イタチもまた、彼の存在を見て見ぬふりしたかった。
存在を認識してしまえば、彼が何者なのか知ってしまえば、なにかが壊れてしまう気がした。