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【マギ】亡国の少女

第3章 煌帝国




「紅覇、入るぞ」

「はいはい、どうぞー」

入ってきた男は、紅覇と同じ紅髪紅瞳。
ただし、紅覇よりも大柄で引き締まった体躯。
そして、眼つきが――

「っ」

刺すような視線に冷たさと重圧を感じ、体が強張る。

金縛りにあったかのような感覚。

動けない。

逸らせない。

怖い。

怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い――





ふっ、と

男が目を逸らし、体が軽くなった。


何、この人……。


「炎兄、この子目ぇ覚ましたよー」

「見ればわかる」

(『炎兄なら――』)

えんにい……この人が……?

「えんにい」は紅覇を少しだけ下がらせ、ボクの横に立った。

その目に、もうさっきのような重圧は感じられない。

むしろ、柔らかい光が宿っていた。

「俺は煌帝国第一皇子、練紅炎だ」

紅炎。だから、炎兄。なるほど。

「貴様。名は何と言う」

名前?名前は……

「ボクは……猫だよ」

「『猫』っていう名前なのー?ほんとーに?」

いつの間にか紅覇がまた顔を覗き込んで首を傾げている。

「猫には、見えないけどなぁ……」

「見た目が由来じゃないよ。みんなに、猫って呼ばれてた。それ以外の呼び名はない」

それでも不自由はなかった。
親しみを込めて名前を呼ぼうとする人など、いなかったから。

盗っ人猫――それで通った。

生きるために他人の家に入り込み、
食べ物を盗み、
罵倒され、
殴られ、
蹴られ、

生きてきた。

だからボクは盗っ人猫だ。
薄汚い野良猫だ。



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