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王様嫌いな彼女

第7章 トラウマ


「俺が…俺が頑張らなきゃ」

「徹」

「ごめんちょっと向こう行ってて」


「徹、」

「忙しいの、ちょっと向こう行ってて」


「徹…」

「勝たなきゃ、俺が強くならなきゃ勝てない」

強さにこだわるようになって周りを見れなくなっていたし
精神も壊れかけていたように見えた
原因は天才の現れと大きな壁だった

「及川さん!」

「やめろ…やめろっ!!」

「徹!!」

パシッ

「及川!!」

「…岩ちゃん…」

「頭冷やしてこい」

体育館の外に出てすみっこに座っている徹の背中は少し小さく見えた

「徹」

「わかんないんだよね、なんでこんなに焦ってなんでこんなに苦しいのか」

「……」

「飛雄は教えなくても見るだけで俺の技を盗んでいくよね、たぶんそのうち俺を越す…頑張ってんのになんでこんなに負けるんだろう…俺だって…俺だって…」

「徹…徹はそのままでいいんだよ、いっぱい頑張ってるのし…」

「わかってないでしょ!」

パシッと手を跳ね除けられた
拒絶されたのは初めてで驚きが隠さなかったし戸惑った

「…ごめんね……」

溢れ出そうな涙をグッと堪えてそのまま徹から離れた
私は何も知らないんだ
私じゃダメなんだ

「ゆいな、気にすんなよ」

「え、あ、うん」

「アイツは気が動転してるだけだほっとけ」

「…ごめんね」

「お前が謝んな、悪くねーんだから」

じゃあ悪いのは誰?
私じゃないなら誰なの?
徹をここまで変えたのは誰?
影山飛雄だ

徹を変えたアイツが憎くて憎くてたまらなくなった
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