第17章 東京卍リベンジャーズ・佐藤龍星&菱小次楼
龍星は首にかけたタオルで濡れた髪を拭きながら台所へ行くと
水切りカゴの中にあったグラスを手に取り、水道から直接水を注ぐ
部屋着のTシャツから伸びる長い腕の至るところに、打撲の痕が赤黒く浮かびあがっていた
『……龍…星………傷の手当て、させて…』
「…必要ねぇ」
『っ…顔のとこだけでもいいから』
「……」
『……お願い…』
「……」
龍星はグラスの水を一気に飲み干すと
黙って部屋の方へ歩いて行き、床の上に座った
私は押し入れから救急箱を出し
彼の隣に膝をついて怪我の手当てをした
龍星の顔は、目の上が腫れあがり
額が切れて血が滲んでいた
『……ひどい…』
「…大した事ねーよ。喧嘩だったらこのくらいの怪我なんかしょっちゅうだ」
『でも!……これは…喧嘩じゃないでしょ?……っ…これは…』
龍星にこの傷を付けたのが誰なのかハッキリしてしまうのが怖くて
それ以上言葉を続けられなかった私に、龍星は「…いいんだ……悪いのはオレだから」と言った
「…オレがアイツを裏切るような真似したから……自業自得なんだよ」
『……龍…星…』
龍星は伏せていた顔を上げ、私の目を見た
「………レイナにも……謝らなくちゃな…」
昔と変わらない優しい瞳に、胸が苦しくなって
抑えていた気持ちが溢れ出る
『…っ……何…で……なにも言ってくれなかったの?………転校のことも……引っ越したことも…………………電話、だって……何度もかけたのに…全然出てくれなくて…』
「……うん……ゴメン。……………オレ…逃げたんだ…」
『……』
「………小次楼が心に抱いてる闇を…少しでも晴らしてやりたくて……オレは四谷傀團を大きくすることに力を注いできた。…………でも…チームがデカくなればなるほど…アイツのやる事はエスカレートしていって……オレの言葉にも…全く耳を貸さなくなった…」
『……』
「…もう、オレじゃ小次楼を守れないような気がしたんだ………それでオレは…アイツの側にいるのが辛くなって、逃げた。……………オレらの間で板挟みになったら苦しむだろうと思うと…オマエには何も言えなかった………ゴメンな…」