第17章 東京卍リベンジャーズ・佐藤龍星&菱小次楼
そのまま眠ろうとして目を閉じた小次楼の頬にかかっている髪を指先ですくって、耳の後ろへと流す
『……伸びたね…』
私はそう言って、もうすぐ肩にかかりそうな柔らかな髪を一房、くるりと指に絡めた
『……』
いままでずっと
彼の髪を切っていたのは龍星だった
風呂場の鏡の前で楽しそうに話をしながらハサミを動かす龍星の手先を見ているのが、私は好きだった
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『龍星ってホント器用だよね…』
「そーか?オレ好きなんだよ、こーゆーの」
『じゃあ、将来美容師とかになればいいじゃん♪…なんか似合いそう』
「んー。それもいいかもな」
そんな会話をしていると、小次楼が不満げな顔で遮る
「は?ダメだそんなの。…龍星はオレ専属だろ?」
「専属?」
「そ。オマエはオレの専属美容師なの。だから他のヤツの髪なんか切るなよ」
「はぁ?」
小次楼の独占欲には慣れきっている龍星が、苦笑いしながら冗談ぽく言い返す
「…ったく……分かったよ。…その代わり、オマエもオレ以外のヤツには髪切らせんなよ?」
「そんなん言われなくたってそのつもりだワ」
『…フフ……ホントに仲良いね、2人とも』
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笑顔で溢れていたあの優しい時間が
何気ない日常の数々が
どれほど貴重なものだったか
無くなってしまった今は、身に染みて分かる
「………レイナ……………オマエは…寂しいか?」
彼の髪に触れたまま動けなくなってしまった私に、小次楼は静かな声で聞く
『……』
黙って首を横に振った私を強く抱きしめて
小さな子供をあやすように背中を撫でた
「……大丈夫だ。…また、昔みたいに暮らせるようになる……オレが必ずそうしてやるから…」
すっかり声変わりを終えた小次楼の声が
呪文のように脳をふるわせる
『…………ウン』
小さく頷いた後
私はあたたかな夢の中へと落ちていった